歯周内科治療とは
歯周内科治療とは、お薬の力を活用して、お口の環境を根本から改善していく治療法です。
歯周病は細菌による感染症であり、どれほど丁寧に汚れを取り除いても、お口の中に原因菌が活発に存在している限り、再発のリスクを抑えることは困難です。
そこで、検査結果に基づいた内服薬や専用の歯磨き剤を用いて、原因菌が住み着きにくい環境を整え、体の内側から集中的に菌へアプローチします。
これまで、定期的なクリーニングを続けていてもなかなか症状が改善しなかった方や、何度も歯ぐきの腫れを繰り返している方にこそ、検討していただきたい選択肢です。
外側からのケアに内科的な視点を加えることで、より安定してお口の健康を維持できる状態を目指します。
従来の治療法との主な違い
| 項目 | 従来の歯周病治療 | 歯周内科治療 |
|---|---|---|
| 治療内容 | ・歯石除去や歯の周囲のクリーニング ・ブラッシング指導 ・口腔内が改善するまで処置を繰り返す |
・感染している歯周病菌の種類を検査 ・原因菌に合わせた飲み薬を処方 ・炎症が落ち着いた後に歯石除去とブラッシング指導 |
| 治療期間 | 数か月〜数年にわたることが多い | 約2週間ほどで効果を実感しやすい |
| 痛み | 炎症が残った状態で処置を行うため、治療中に痛みを伴うことがある | 少ない薬で炎症を抑えてから処置を行うため、痛みが出にくい |
| 費用 | 治療期間が長くなりやすく、通院回数に応じて費用がかかる | 治療期間が比較的短いため、結果的に費用を抑えやすい |
| 効果 | セルフケア状況や、医師・歯科衛生士の技術差によって結果にばらつきが出やすい | 歯周内科治療の知識に基づいて行うため、効果のばらつきが出にくい |
歯周内科治療のメリット
痛みを抑えた治療が可能
切開や縫合などの外科処置を行わずに進められるため、痛みや出血を最小限に抑えられます。重度の歯周病でも、まずは内科的アプローチで菌の活動を抑えることで、その後の治療に伴う腫れや身体への負担を大幅に軽減できます。
再発リスクの軽減が期待できる
位相差顕微鏡検査でお口の中の原因菌を正確に特定し、その菌に効果的な薬で体の内側から直接アプローチします。物理的なクリーニングだけでは取りきれなかった菌まで抑制できるため、再発しにくい口腔環境を作ることが可能です。
気になる口臭を改善できる
歯周病が悪化すると、歯周ポケット内の細菌が独特なガスを放ち、強い口臭の原因となります。内科的なアプローチによって細菌の数そのものを劇的に減らすことで、自分では気づきにくいお口のニオイも根本から改善する効果が期待できます。
比較的短期間で症状の改善が目指せる
従来の歯周病治療では、症状の程度によっては数か月以上の通院が必要になるケースも少なくありません。一方、歯周内科治療の場合は、1週間程度で痛みや膿などの不快な症状が治まることが多く、治療完了までの期間も2週間〜1ヶ月程度と、比較的短期間で済むのが特徴です。
お口の中を科学的に分析「位相差顕微鏡検査」
歯周内科治療では、位相差顕微鏡を使った細菌検査で、お口の中の状態を科学的に分析します。この検査により、歯周病の原因となる細菌の種類や量を把握することができます。
検査では、歯周ポケット周辺からわずかに汚れを採取し、位相差顕微鏡で観察します。位相差顕微鏡は染色を行わずに生きた細菌を確認でき、細菌の形や動き、活動性まで把握可能です。これにより、単に「細菌がいるかどうか」ではなく、どの細菌がどの程度存在しているかを詳細に知ることができます。
歯周内科治療で使用するお薬
歯周内科治療では、歯周病の原因となる細菌や真菌(カビ)に直接働きかけるため、抗菌剤(抗生物質)や抗真菌剤を使用します。いずれも内科でも広く使われている医療用医薬品で、適切に用いることで効果的に歯周病の改善が期待できます。
内服薬
お口の状態や細菌検査の結果に合わせて処方します。歯周病菌の増殖を抑える働き(静菌作用)があり、炎症の起きている部分に集中的に作用します。これにより、全身への影響を最小限に抑えながら、効率よく歯周病菌にアプローチできます。
洗口剤
歯周内科治療では、真菌(カビ)への対策も重要です。抗真菌作用を持つ洗口剤を使用することで、口腔内のカビの増殖を抑え、清潔な環境を保ちます。もともとは消化管でのカンジダ菌の増殖を抑える目的で使用されていた薬ですが、歯みがきの際にうがい薬として応用することで、歯周病菌の活動を抑えることができます。
歯周内科専用歯みがき剤
治療中は、口腔内の菌が定着しにくくなる歯みがき剤を使用します。日常のブラッシングで歯周病菌や真菌の増殖を抑え、治療効果をサポートします。
歯周内科治療の流れ
1顕微鏡による細菌・真菌の確認
まず、位相差顕微鏡を使用して、お口の中に存在する細菌や真菌の種類・量を詳しく確認します。この検査により、歯周病の原因となっている微生物の状態を把握できるだけでなく、治療前後の変化を比較することで治療効果を客観的に確認することが可能です。
2お薬の服用
検査結果をもとに、歯周病菌に効果のある内服薬を処方します。3日間お薬を服用していただき、体の内側から細菌に作用させます。薬の効果は約1週間にわたって菌の増殖を抑制します。
3抗真菌薬を用いた歯みがき
内服薬と並行して、専用の薬剤を使用した歯みがきを行っていただきます。
この歯みがき剤は、口腔内に存在する真菌(カビ)を減らすことを目的としています。
約1週間この専用薬剤でセルフケアを続けていただき、内服薬と歯みがきを組み合わせることで、短期間で口腔内の細菌数を大きく減らしていきます。
4除菌後の歯石除去
歯周内科治療では、まず薬で歯周病菌の数を減らしてから歯石を除去します。炎症が強い状態で歯石を取り除くと、血管を通じて細菌が体内に入るリスクがあるためです。
歯石除去は、歯肉の上と下で分けて段階的に行い、安全性に配慮しながら進めます。こうすることで、体への負担を抑えつつ、効果的に口腔内を清潔な状態に整えることができます。
歯周内科治療の注意点
費用について
歯周内科治療には、基本的に保険が適用されません。全額自己負担となるため、従来の治療に比べて費用が高くなる傾向があります。ただし、処置の内容によっては一部保険が適用される場合もあります。事前のカウンセリングで費用についても確認しておきましょう。
治療の適応について
薬を服用する治療法のため、どなたでも受けられるわけではありません。薬剤アレルギーがある方や妊娠中の方は、治療が制限される場合があります。過去に抗生物質でアレルギーを起こした経験がある方、現在他の薬を服用中の方は、必ず事前にご相談ください。
治療の効果について
細菌を減らす効果は非常に高いですが、歯が大きくぐらついている重度のケースでは、薬だけでの改善が難しい場合があります。状態によっては、歯周組織再生療法や抜歯が必要になることもあります。
治療後について
薬で一時的に除菌ができても、日々の歯磨きを怠れば再発のリスクは高まります。健康な状態を長く保つためには、ご自身での丁寧なブラッシングと、歯科医院での定期的なメンテナンスを継続することが不可欠です。